健康

麻疹風疹の予防接種の値段とワクチンの副作用 大人が危険な年齢は?

今年の7月以降、麻疹(はしか)にかかる人が急増しているということで、厚労省が注意喚起を出しました。なぜなら、麻疹にはインフルエンザの10倍もの感染力があるからです。

さらに、麻疹ウイルスに感染することによって起こる急性伝染病ですが、このウイルスそのものに有効な薬がまだありません。

では、どう対処すればいいのでしょうか?

麻疹風疹の予防接種の値段とワクチンの副作用

唯一の予防策でもある麻疹の予防接種の費用はどれほどかかるのか、気になる副作用はあるのかどうか、注射を打っておいた方がよい年齢はいくつぐらいなのかをまとめました。

麻疹風疹の予防接種の値段はいくらぐらい?

最近では麻疹単体の予防接種よりも、麻疹・風疹混合生ワクチン(MRワクチン)を勧められることが多くなっています。必要な免疫をムダなく早く安全に獲得できるからです。

そのため、町の小さな内科などでは、単体のワクチンを置いてないところもあり、受ける側もどうせなら麻疹も風疹も予防したいということで、混合ワクチンが選ばれています。

もちろん、病院によってワクチンの値段は異なりますが、目安としては次のような予算を取っておくといいでしょう。

麻疹ワクチン
6,000円程度
風疹ワクチン
6,000円程度
麻疹風疹ワクチン
10,000円程度

※大人の場合は保険適用外ですが、自治体によっては助成がある場合もあります。

また、95%以上の人が1回の接種で免疫獲得できますが、できればこれらのワクチンは2回接種することが推奨されています。

ワクチンを2回接種する理由
  • 1回の接種で免疫ができなかった5%の人に免疫をつけるため。
  • 1回目で免疫がついたにも関わらず、時間の経過と共に免疫が減衰した人に再び刺激を与えて免疫を強くする。
  • 公的補助において1回目の接種ができなかった人への機会提供

もし2回目の接種をするなら、最低3週間以上開けてからの接種となります。そのため、費用は倍となりますので、たとえば麻疹風疹ワクチンなら約2万円が必要です。

また、持続期間はおよそ10年前後とされています。

ちなみに、麻疹と風疹は全く別の病気です。風疹のことを「3日ばしか」と言いますが、似たような症状が出るものの、風疹の方が症状が軽いことからこんな呼び方をします。

麻疹に感染すると、抗体のない人はほぼ100%の確率で発病しますが、風疹に感染しても、15~30%の人は症状が出ません。

「はしか」と聞くと、誰もがかかるそれほど大したことのない病気、という印象がありますが、実は死亡率は1000人に1人あり、合併症による後遺症も深刻となる怖い病気なのです。

麻疹ワクチンによる副作用はどんなもの?

子宮頸がん予防ワクチンの副作用が度々取り上げられていることもあり、ワクチンによる副作用(副反応)は少々気になるところでしょう。

ですが、麻疹風疹ワクチンは歴史のあるものなので、その危険性はかなり低いものとなっており、安心できるレベルだと言われています。

麻疹風疹ワクチンの副作用(1回目のワクチン接種後)

2週間以内に発熱
約13%
1週間前後に発疹
数%
アレルギー反応によるじんましん
約3.0%
発熱に伴うけいれん
約0.3%

ふつうは1~2日でおさまるので心配はいりません。また、2回目の接種では、発熱・発疹が出る率はきわめて低くなります。

合併症として、肺炎・中耳炎・脳炎などが報告されており、ワクチンの副作用よりも麻疹にかかった方が、何倍も怖いことが分かります。

麻疹の予防接種は大人も必要! その年齢とは?

大人になってはしかになる危険性の方が圧倒的に高く、危険な合併症が起こりやすいとされているのは、5歳未満の小児と20歳以上の大人です。

1990年4月1日より麻疹ワクチンは定期予防接種となり、はしかにかかる子どもは減少しました。2015年3月には、WHO(世界保健機構)より、日本国内に土着ウイルスがない排除状態になったと認定されたほどです。

今は、1歳児と小学校入学前1年間で2回のワクチン定期接種が無料で行なわれているのですが、1990年4月1日以前に生まれた人で、特に26歳~39歳では、ワクチンの定期接種が0~1回ということが多く、ウイルスの抗体ができていない可能性があります。

予防接種を打ったかどうか覚えていない人は、抗体があるかを病院で検査し、抗体価が低い場合にはワクチンを接種すればよいという流れになります。

妊娠中に感染した場合、重い合併症のリスクがあり、流産や早産の恐れもあるため、結婚したら早めに抗体のチェックをしておいた方が安心ですよ。

麻疹の感染経路とは?

はしかもインフルエンザと似たような感染の仕方をします。

  • 空気感染(同じ空間にいるだけで感染する)
  • 飛沫感染(つばなどが飛ぶことで感染する)
  • 接触感染(電車のつり革やドアノブなどを介して感染する)

マスク・手洗いはやらないよりはマシですが、それほど効果的ではありません。やはり、ワクチン接種がいちばんの予防方法となります。

麻疹の潜伏期間は?

では、症状と潜伏期間の関係はどうなっているのでしょうか。

潜伏期(0~12日)
症状なし
初期 (2~4日)
発熱や咳・鼻水など風邪のような症状
発疹期(4~5日)
39度以上の高熱と発疹

人にうつす感染力としては、症状が出る1日前から発疹が出た4~5日目まで続き、潜伏期に近い方が感染力が強いという状態です。そのため、自覚症状がないときに人にうつしてしまう危険があるのです。

今回の関空の例では、熱を出した空港職員の女性が発熱して2軒の病院へ行ったものの、どちらも風邪という診断でした。

いったん熱が下がって出勤したものの、再度発熱し始めたため、さらに病院を周り、4軒目の病院でやっと麻疹と診断されたという経緯があります。

2015年を例に挙げると、全国で35人しか麻疹にかかっていないので、病院側もはしかだと思わない可能性があったとのこと。これが感染を広げてしまった可能性があります。

はしか予防 赤ちゃんも危険?

1歳になると無料で予防接種が受けられますが、1歳未満の赤ちゃんが麻疹=はしかになる可能性はどうなのでしょうか?

生まれてすぐは母親からの抗体が受け継がれている状態ですが、生後4~6ヶ月ほどで母親の移行抗体はほぼ消滅し、6ヶ月を過ぎるとはしかにかかる可能性も出てきます。

1歳になったら無料でワクチン接種できるけれど、1歳まで待てない、空白の半年が心配というなら、生後6ヶ月~1歳未満のワクチン接種は自費で受けることになります。

2016年に報告されている麻疹患者41名の年齢分布(8月31日現在)

年齢
0歳
1歳  
4歳  
5~9歳
10~14歳  
15~19歳  
20~24歳
25~29歳
30~34歳
35歳~39歳  
40代
60代  

上記の患者さんのうち、ワクチンを受けている方は1回が3名、2回が3名と合計で6名いらっしゃいますが、その年齢は次のとおりです。
ワクチン1回接種:5~9歳、20~24歳、25~29歳
ワクチン2回接種:10~15歳、15~19歳、20~24歳

ワクチンを2回受けていても、約10年ほどで免疫が落ちてきて発症の可能性があるということが、国立感染症研究所が発表したこの数字を見ると、よく分かりますね。

まとめ

関西福祉大学の医学博士であり、感染症に詳しい勝田吉彰さんによると、

中国、インドネシア、マレーシアなど日本と人的交流が多い地域から国境を越えて日本へ入ってきている可能性がある。

日本とアジアを結ぶLCC(格安航空会社)の新規就航やビザ要件の緩和などで、今後もリスクは高まる。

とのこと。

麻疹には予防接種が唯一の予防策ですので、受けておいた方がいいのは間違いありません。不要な心配はあらかじめ防いでおくようにしたいですね。